手前右から時計回りにヒレ、ロース、ハネとカブリ。ハネとは、ロースとバラ肉の中間の肉で「ロースの肉質でありながら、脂がほどよく入っています」とは小林料理長。カブリはヒレ肉についている部位。いずれも3500円コースの料理で、このほか、肩ロースとメンチカツ、ご飯、味噌汁、キャベツが付く

 

ヒレもロースも少しずつ。とんかつをコースで

とんかつ――といっても、定食屋風のそれではなく、懐石よろしくコーススタイルでとんかつを楽しませてくれるユニークな一軒が、ここ銀座「かつかみ」。料理長の小林久展さんによれば、「とんかつにも“食べどき”がある。天ぷらのように、その一番美味しい瞬間を味わってもらいたいというオーナーの思いから始めた」のだとか。

そのことば通りランチのコースでは、ご覧のごとくしっとりとやわらかなヒレ、脂の甘みが広がるロースに旨みの濃い肩ロースなどの部位が、1種類ずつ順に登場。中には、ハネやカブリといった耳慣れぬ希少部位もあり、微妙に異なる肉質や食感、味わいを食べ比べられるのもこの店ならではだ。

 

3500円コースのデザートとして選べる氷イチゴミルク。旬の時期に作った自家製とちおとめのシロップは甘さ控えめで大人の味。店のオープンは昨年8月

 

160度の油で揚げた後、休ませ、余熱で火を通したかつは、ギリギリ中心に火が入る絶妙の揚げ上がり。ヒレは6分揚げて2分、ロースや肩ロースはそれぞれ7分揚げ、休ませるのが2分と、部位ごとに揚げ時間と温度を調節。カットしたばかりの肉の表面をうっすらと覆う透明な肉汁が美味しさの証だ。豚は旨みと甘みのバランスが良い「米澤豚一番育ち」。ビタミンB1や抗酸化作用の強いビタミンEが豊富な肉質ゆえ、夏バテ回復にも一役買ってくれそうだ。