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やっこさんに鶴、帆かけ船にかぶと……。子ども時代に慣れ親しんだ「おりがみ」を折ることが、脳の働きによい影響をもたらすと話題になっています。おりがみの効果について、脳科学のエキスパートに聞きました(構成:浦上泰栄 画像提供:あさ出版(『脳科学でわかった! 80歳からでも若返る すごい脳活おりがみ』より)

脳と指先は密接に連携

歳を重ねるにつれて、「もの忘れが増えた」「集中力が続かない」など、認知機能の衰えを誰もが感じるようになります。主な原因は、加齢とともに脳内の神経細胞が減少したり、萎縮したりすること。

老化が始まる時期は機能によって異なり、情報処理力は18歳、人の名前を覚える力は22歳、集中力は43歳でピークを迎え、それ以降、徐々に低下する傾向にあります。

とはいえ、こうした数字はあくまで平均値。80代になっても50代並みの認知能力を持つ〈スーパーエイジャー〉と呼ばれる方が少なからずいます。

また、近年のさまざまな研究によって、食事や睡眠の質の向上、運動の継続など生活習慣の見直しに加えて、指先を細かく動かすことが神経細胞の働きを活性化させて、脳を若々しく保つことがわかってきました。

では、なぜ指先なのでしょうか。指先には数多くの末梢神経が存在し、脳の運動野(運動を司る部位)や前頭前野(認知機能を司る部位)から出された指令がその神経を通って指先に伝達されることで、精密で細かな動きが可能になります。

脳の老化が進むと指先の動きは鈍くなりますが、一方で、指先を速く動かすトレーニングを続けると、活動量が増えて脳機能も向上。脳の働きと指先の動きにはこのように密接な関係があるのです。

もう一つ、実例をあげましょう。駅や工事現場で、係員が指をさしながら確認作業をする姿を見かけませんか。指をさすと視線はその先に向かい、しっかり目視することで集中力が上がって、確認ミスが減ることが実験データで明らかに。

自宅で鍵や携帯電話を置いた場所を忘れ、「どこへ行った?」と探し回ることがあると思います。ここで大事なのは「置いた場所を覚える」記憶力ではなく、集中力。「鍵はそこに置いた」と指をさしながら0.3秒以上集中して目視すると、記憶が定着しやすくなるため、探しものの頻度が減るかもしれません。