日本の現在の税制における中核(基幹税目)は、所得税、法人税、消費税の3つであり、これらは『基幹三税』と呼ばれていますが、江戸時代の税の中核であった年貢についてどれくらいご存知でしょうか。歴史学者である渡辺尚志先生は「江戸時代は年貢抜きには語れない」と語ります。そこで今回は渡辺先生の著書『年貢-せめぎ合う江戸時代の領主と百姓』より一部を抜粋し、江戸時代の生活や年貢についてお届けします。
村行政と教育・医療・セイフティネット
江戸時代には、村に関わる行政全般が村の自治に依拠するかたちで行われた。現代の私たちは、火事があれば119番に連絡し、泥棒が入れば110番通報する。しかし、江戸時代の村には、消防署も警察署もなかった。火事や盗難の際には、村人たち自ら消火や捜査に当たった。領主への提出文書も、村が責任をもって作成した。
幕府や領主からの法令の通達も、村を単位に行われた。法令が村に廻ってくると、名主はまずそれを写し取る。そのうえで村人たちを集めて読み聞かせたり、法令の写しを回覧したり、写しを名主宅に張り出したりして周知を図った。
重要法令の場合は、法令を遵守する旨の請書(誓約書)を、領主が各戸の戸主たちから徴することがあったが、そのときも一枚の請書に村の戸主たちが連署して領主に提出した。法の周知徹底も、村単位で行われたといえる。今日なら国や地方自治体が行う行政のかなりの部分を、江戸時代には村が請け負っていたのである。
村は、村人の生存と生活を助けるために、さまざまな面で積極的役割を果たした。そのいくつかを紹介しよう。