(写真提供:Photo AC)
「行」という漢字には、コウ、ギョウ、アンと3種類の読み方があります。実は、漢字を「音読み」と「訓読み」に分けているのは日本だけなのだそうです。なぜ日本語の読みは、こんなにも複雑なのでしょうか?そこで今回は、音韻史の専門家である山形大学人文社会科学部・中澤信幸教授の著書『漢字と音読みの謎を解く-呉音・漢音・唐音の奥深い世界』より一部を抜粋し、「ややこしくて面白い、漢字と音読みの世界」をご紹介します。

漢字文化圏

朝鮮、ベトナムも、日本と同様に漢字を取り入れていた。

朝鮮半島は中国と陸続きということもあり、古くから中国の影響を受けてきた。紀元前108年には漢の武帝が朝鮮を征服し、楽浪郡など4郡を置いて支配下に編入した。楽浪郡は313年に高句麗によって滅ぼされるが、その高句麗も668年には唐・新羅の連合軍によって滅ぼされる。

このように朝鮮は政治的・軍事的に中国の強い影響を受け続けたわけだが、言語についてもそれは同様であり、朝鮮語では多くの漢語が取り入れられることになった。また日本語と同様に固有の文字を持たなかったので、必然的に漢字が使われるようになった。

ベトナムもまた中国とは陸続きということで、古くから中国の影響を受け続けた。紀元前111年に漢の武帝がベトナムを征服して9郡を設置して以来、938年に独立を勝ち取るまで、実に1000年以上にわたって中国の支配を受け続けたのである。