婦人科医の高尾美穂さん(左)とエッセイストの安藤和津さん(右)
孫2人のお守りでいつもヘトヘトという安藤和津さん(74歳)。多くの女性をみてきた婦人科医の高尾美穂さんが、50代以降の「しんどさ」の原因を解説。年を重ねても心身ともに元気でいるための秘訣を教えます(構成=村瀬素子 撮影=須藤敬一)

50代以降に感じる心身の不調

安藤 今日はお目にかかれるのを楽しみにしていました! というのも、年々「体が思うように動かなくなった」「体力の回復が遅くなった」と感じているからでして。

高尾 50代以降、心身の不調を抱える女性は多いですから、お力になれれば嬉しいです。

安藤 さっそくですが、2人の娘にそれぞれ子どもが生まれてから、孫のお守りという役目が増えました。かわいくてたまらない半面、74歳の私の体力がもたないんです(笑)。先日も4歳の孫が急に走り出して、「危ない! 止まってぇー!」って叫びながら追いかけましたが、すばしっこくてとてもじゃないけど追いつけない。体力で負けてしまい、いつもヘトヘトです。

高尾 70代で瞬時に走れるのは、素晴らしいことですよ!

安藤 いえいえ。娘を育てていた頃の私なら、一緒に全速力で走れていたのにな……と思い出すんです。

高尾 みなさんよく、若い頃の自分と比べて「動けなくなった」「疲れやすくなった」とおっしゃるのですが、年齢とともに身体機能が低下していくのは自然なこと。だから、昔と比較しても仕方ありません。それよりも、年齢なりの動ける体を維持していくことのほうが大切ですよ。

安藤 でも……、走るにしても痛む膝をかばいながらですし、すぐに息も上がっちゃう。以前はなかった体の変化に、敏感になってしまって。

高尾 加齢とともにどうしても関節の滑りが悪くなるので、痛みが出てしまう傾向はありますね。心肺機能も加齢によって低下します。肺に入った酸素は血液中に取り込まれ、心臓のポンプ機能で全身に送られるから筋肉が動かせる。

でも心肺機能が落ちている人が走るとなると、鼓動をたくさん打って心拍数を上げ、筋肉に酸素を運ばなければなりません。だから心臓が疲れて「しんどい」と感じるのです。当然、回復機能も落ちているので、疲れがなかなかとれない、という悪循環に陥るわけです。

安藤 なるほど。

高尾 とはいえ、心身ともに元気に人生を楽しみたいですよね。女性ホルモンの変化の影響を強く受ける女性が不調を感じやすいのは事実ですから、今の自分の体や心の状態を把握し、不具合をその都度改善していくことが大切です。