「引退は、皆さんが想像するほど私にとって大きな選択ではありませんでした。」
5000m、10000m競走とマラソンでオリンピックに4大会連続出場した福士加代子さんは、その果敢な走りだけでなく、明るいキャラクターや率直な言動でも常に注目を浴びてきた選手だ。2022年1月の大阪ハーフマラソンを最後に競技の第一線を退いてからは、新たな人生を歩み始めている(構成=古川美穂)

将来また走りたくなったら再開すればいい

現在、ワコールのスポーツグループという部署で働いています。リモートワークもあるので出社は週に3回くらい。デスクワークのほか、チームのアドバイザーとして練習を見たり、講演会やマラソンイベントに出たりもします。

ワコールは、実業団の選手を正社員として採用する会社。現役時代も出社していたのですが、いまは丸一日席にいることもあり、まわりから「おっ、いる!」なんて珍しがられています。

引退は、皆さんが想像するほど私にとって大きな選択ではありませんでした。実業団に入ったときから、やめるタイミングをいつも探しているようなところがありましたし、監督に何度も「やめます」と口にしては撤回してきた。だから、ここらで本気で腹を決めた、という感じでしょうか。

いまも週に2、3回、住まいの近くの鴨川沿いを走っていますし、将来また走りたくなったら再開すればいいだけですからね。ただ皆さんに「引退します」と報告したことは、選手にとってひとつのケジメになるので、よかったな、と感じています。