畠山重忠。かつては平氏方として参戦し、源氏方の三浦・和田と対峙した(『畠山重忠』著:栗原勇/日本戦史研究会)。国立国会図書館デジタルコレクション

小栗旬さん演じる北条義時、大泉洋さん演じる源頼朝ら、権力の座を巡る武士たちの駆け引きが三谷幸喜さんの脚本で巧みに描かれるNHK大河ドラマ『鎌倉殿の13人』(総合、日曜午後8時ほか)。9月18日放送の第36回「武士の鑑」では、北条時政と畠山重忠との対立が深まる中、時政は三浦、和田、稲毛と対応を協議。手勢を率いて鎌倉を目指す重忠との間で板挟みとなった義時は、政子らと事態の収拾を図るも……といった内容が展開しました。

一方、歴史研究者で東大史料編纂所教授・本郷和人先生が気になるあのシーンをプレイバック、解説するのが本連載。第6回は「『吾妻鏡』が”重忠推し”だった理由」について。この連載を読めばドラマがさらに楽しくなること間違いなし!

花も実もある武士“畠山重忠”

中川大志さん演じる畠山重忠がついに討たれました。

第36回のタイトル通りで「武士の鑑」とも称される人気武士・重忠の最期。加えて、一対一で義時と重忠が殴り合いをするクライマックスなどの名シーンの数々と中川さんの魂の演技に、ネット上には賞賛の声が溢れていました。

直接に彼を射止めたのは愛甲季隆(あいこうすえたか)という相模の武士。この季隆と工藤景光(甲斐の武士)、曽我祐信(相模の武士。曾我兄弟の養父。祐は示すへんに右)の三人が、幕府創成期の「弓の名手」です。

当時の「優れた武士」とは、すなわち「弓の名手」。つづいて、「大力=力持ち」。

畠山重忠はたいへんな大力で知られ、また音楽の才もあった。それで、花も実もある武士として、人気が高かったようです。