通帳はひとつにまとめよう
僕がいちばん大切だと思っている備えは、お金の身辺整理です。
77歳になって、この身辺整理に初めて本気で向き合いました。
通帳を全部出して並べてみたら、笑ってしまいますが、額ではなく通帳の数が、思っていた以上にありました。
水道代やガス代が引き落とされる通帳。年金が入ってくる通帳。
それとは別に、「銀行がつぶれたとき、保護される額が限定される」と聞いて、リスク分散のつもりでつくった通帳が、いくつか出てきました。
当時は、それぞれに意味があったのです。
でも、正直に言えば、「あれあれ症候群」になり始めた鎌田にとって、つまり、固有名詞がなかなか出なくなり、「あれ」という言葉が多くなって、記憶力が少しずつ落ちてきている鎌田にとって、もう自分ではわからなくなってきていた。
そんな僕に、息子が言いました。
「通帳は、ひとつか、せめてふたつくらいにしたほうがいい。そのほうが、あとあとわかりやすいよ。親父が死んだあとは、もっとわからなくなってしまう」
そのひとことに、僕ははっとしました。
僕が「いつ死んでもいい」とよく言っているので、家族のあいだで死のことがよく取り沙汰されます。これは、身辺整理をくり返してきたごほうびだと思います。
死のことをタブー視しない、準備をしておくことは大事だと、家族みんなが思っているのです。