最後まで一流の腕前だった

高橋先生の手術は、手術時間も出血量も日本の他施設と比べて短く少なかった。先生の晩年は、小児がんの手術を准教授に任せることもあったが、けっこう最後の最後まで執刀していた。

また、先生は、若手外科医が初めての手術をするときに必ず手術の「前立ち」(執刀医の正面に立って指導する)を務めた。鼠径ヘルニアとか、腸重積とか、急性虫垂炎とか、肥厚性幽門狭窄症とか。中堅の医師が先天性食道閉鎖という新生児外科の中で最も難しい手術を初めて執刀するときも前立ちした。

(写真提供:Photo AC)

先生はメチャ怖いので(笑)、若手医師は手術中に頭の中が真っ白になり、手が止まったり、間違ったことをやり始めたりする。教授は無言でずっと術野を睨んでいるが、これ以上はアウトという一線の手前になると強烈なカミナリを落として、そこから正しい方向に導いていった。

傍から見れば、ただ単に怒鳴っているように見えるだけかもしれないが、手術の名手でなければこういう振る舞いはできない。先生は定年退官するまで、この指導的前立ちを続けていた。ザ・外科医は最後まで一流の腕前だった。

その後、およそ10年ごとに教授は交代し、やはりみんな手術はうまかった。教授の腕が悪かったら医局員はついてこないかもしれない。現在の教授は、小児外科医として千葉県で一番手術がうまいと言っていい。