マンパワーがあるのは大学病院だけ
大学病院の臨床レベルの高さは、個人のスキルだけではない。マンパワーがあることは大学病院の重要な武器である。たとえば、肝臓移植。この手術を一般病院が行うことには相当無理がある。
小児領域の生体肝移植は、主に胆道閉鎖という難病に対して行われる。主治医は小児外科医が務めるが、病院のフルパワーが必要になる。手術は、ドナー(肝臓の提供者)とレシピエント(肝臓をもらう患者)の手術が並行して行われる。
ドナーは子どもの親なので、肝臓の一部を摘出するのは成人の肝胆膵外科医。肝硬変に陥った子どもの肝臓を摘出するのは小児外科チーム。移植肝の血管(特に肝動脈が細くて難しい)を吻合するのは形成外科医。手術室を二つ使って、数十人の外科医が手術に参加する。看護師や補助看護師を含めると、ちょっと数えきれない人数になる。
手術も大変だが、術後の管理も極めて難しい。小児外科チームが全員交代で徹夜の術後ケアをする。早期の合併症は、つないだ血管に血栓ができて血流が途絶えることだ。だから子どもには持続的に血液凝固剤を点滴から入れる。
小児外科医は、1時間ごとに超音波検査で血管の中を流れる血流の状態をチェックし、また採血を行って血液の固まる時間を測定する。最低、1週間はこうした集中管理が必要になる。こうしたマンパワーがあるのは大学病院だけである。
※本稿は、『大学病院の正体-手術、人事、教育、研究のすべて』(中央公論新社)の一部を再編集したものです。
『大学病院の正体-手術、人事、教育、研究のすべて』(著:松永正訓/中央公論新社)
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