トートバッグ1つで4人部屋へ

2年前、1度目の手術前よりはナーバスにはなっていなかった。えらいもので、慣れる。初めてのことではないので何となく段取りがわかる。そして、きっと術後は日にちぐすりで良くなるであろうことも、わかる。気持ちは重たかったが日常生活は2年前より淡々とできていた。

今回みつかったがんも、とても小さくて保険がおりないであろうと先生に言われていた(上皮内がんは、保険がおりない場合があります)。

だからというわけではないが、個室ではなく4人部屋に入らせていただくことにした。今回も入院の事は誰にも言わなかった。前回よりも言わなかった。誰もお見舞いに来る人はいないので、少ない荷物だが忘れ物がないようにした(歯ブラシ、コップ、歯磨き粉、財布、保険証、下着、携帯、充電器、小説)。

軽めのトートバッグ1つで4人部屋に入った。大きな窓際のベッドだった。部屋は広めで開放感があった。

わたし以外の3人のうち、2人はわたしと同じ病気で、1人は手術を終えて退院を控えてるおばさま。もう1人は明日手術を控えてるおばさまだった。この部屋には、おばさましかいなかった。
とても賑やかな方たちで、明日手術を控えてるおばさまが退院を控えてるおばさまに聞いていた。

本連載がまとまった青木さやかさんの著書『母』

「やっぱり、痛いの?」
「大丈夫〜痛みは、ほら、普通に私は話しているから」

えーでも昨日は痛そうだったじゃない、でも今日は元気になったわね、と心配そうだが時折笑いもありながら話は進んでいた。