娘がまた心配するだろうか
「お菓子、食べる?」
明日手術のおばさまがお菓子を進めてくれた。
「あ、大丈夫です、ありがとうございます」
「いらない? 私もいらないって言ったんだけど、息子が持ってくるのよ」
「素敵ですね」
「いらないって言ってるのに、もー」
その後の面会時間になると、それぞれの家族がいらしてカーテンを閉めて、話していた。心配している空気が伝わってきた。
わたしのところには誰も来ない。待つ必要もない。誰にも伝えていないのだから。
窓の外をみた。
本当は家に帰りたい。
こわいよこわいよ、と駄々をこねて、眠るまで手を握っていて、と言いたい。そういう相手がいないだけ。
翌日は肺の内視鏡(気管支鏡)をしてから手術をしていただいた。
今度は、反対側の肺の手術だ。両脇に手術のあとが残るだろう。娘がまた
「どうしたの?」
と心配するだろうか。
そんなことをボーっと思いながら、
やはり1度目の手術よりも緊張は少なく、やはり起きたらICUにいた。