新人からベテランにのし上がる
「あなたも聞いたら?」
手術を控えているおばさまがわたしを会話に入れてくれた。
「わたし、ですか?」
「手術のこと、聞いてるの。いま。どんな風だか」
「わたしですね」
「はい」
「なんと、2回目なんです!手術」
「えー!そうなの、すごいじゃない!」
何が凄いのかはわからないにしても、わたしは一気にこの部屋で新人からベテランにのし上った。2度目と聞いて、大変ね、というより、ベテランね、という表現は、なかなか嬉しいものがある。
「1回目はいつ?」
「2年前、くらいです」
「そう、痛かった?」
「まあ、そうですね、術後はやっぱり傷口は」
「そう」
「咳とかしようとすると、わーー!となりましたね」
「痛い?」
「肺が膨らむからですかね、痛かったですね、ですが」
「うん」
「大丈夫です。痛み止めも痛かったらいただけますし」
「大丈夫かしら」
「大丈夫です。先生にお任せしておけば。なにもすることがないですから」
わたしは実際よりも、ほんの少しだけ抑え気味に情報を伝えた。そう、ほんの少し。
術後は確かに日に日にラクになっていくのだ。