人生で、いちばん救われた言葉

他にも、お姑さんの付き添いで肩身が狭そうにくる人もいたし、御主人がものすごく協力的な人もいれば、その逆の人もいました。みんなで情報交換をしたり近況報告をしたりしながら励まし合い、治療を続けた約3年間。
この15人の不妊友達は、誰も出産が叶いませんでした。

ここまで書いてみて、また書く意味を見失いそうな私が居るのも事実です。でも、パーセンテージはわからないものの、これだけ頑張って治療を続けても、子どもに恵まれない夫婦が居るのもまた事実です。

ワイドショーでは時折、高齢出産や不妊治療を経て出産した女性タレントのニュースが扱われます。そういうときMCやコメンテーター、そしてナレーションで決まって言われることは、「いま、治療の真っ最中だという方には、大きな励みになるでしょうね」という文言です。私はワイドショーや情報番組の放送作家もしていましたから、そういう台詞を現場でしょっちゅう耳にしていましたし、不妊治療以外の病気を扱うときには、そういうナレーション原稿を実際に書いてしまったこともありました。

でも……、不妊治療で結果が出ないときに、妊娠・出産した人のニュースなんて聞いても、全く励みになんてならないんですよ。自分と同じような年代の人が「高齢出産した」というニュースも同様です。それが《奇跡》だとわかっているからです。

そして、私がいちばん最初に仲良くなった不妊友達のHさんが治療を卒業するとき、言ってくれた言葉は、いまも私の心を温かくしてくれています。
「私、いつも思っているのよ。この中で誰か一人でも無事に産めることができるなら、私はそれがいちばん嬉しいかも。毎回、心から祈っているからね」

人生で、いちばん救われた言葉かもしれません。

(写真提供:写真AC)

前回「不妊治療で病院や民間療法を渡り歩き〈薬剤性肝炎〉に。情報に振り回され、影響を与える怖さも知った」はこちら