準備その4「おたがいに本当の気持ちを伝え合う」

いままでお話ししてきたことは、とても大切なので、ぜひ準備してもらいたいと思っています。しかし、私があなたにいちばんしてほしいこと、それは、大切な人へメッセージを届け、受け取ることです。

あなたの大切な人が人生の最終段階に差し掛かったとき、あなたがその人に伝えたいメッセージは何でしょうか? 患者さんがあなたに伝えたいメッセージは何でしょうか?

患者さんは、あなたにとってとても大切な人だと思います。いましか時間がないとしたら、本当の気持ちをおたがいシェアしませんか。

いままで言えなかったメッセージがあるのなら、おたがいに伝えてください。ご両親になら「産んでくれてありがとう」でしょうか。ご夫婦なら「いままでありがとう」でしょうか。あるいは「愛している」でしょうか。

「大切な人へメッセージを届け、受け取る」。これがあなたにしてほしいことの4番目です。

どんな遺族でも多かれ少なかれ後悔の気持ちを持っているものですが、つらい気持ちをずっと抱えている人も少なからずいます。一方で、大きな後悔を持たず、前を向いて生きていける人もいます。

私は、この記事に出会ってくれたあなたに、そのような後悔はできる限りしていただきたくないのです。

事情はあるかもしれませんが、「最大限の希望を持ちながら、しっかりとした準備をする」ことで、今後のあなたの人生を明るいものにできるのだと思っています。

そのためにも、あなたの大切な人をできるだけ一番の優先順位にしていただきたいと思っています。ぜひ、これらのことを考え、準備をしてください。

※本稿は、『また、あちらで会いましょう』(かんき出版)の一部を再編集したものです。


また、あちらで会いましょう』(著:四宮敏章/かんき出版)

人生最期の1週間がどんなふうに過ぎていくか知っていますか? 奈良県立医科大学の緩和ケア医が発信する、YouTubeチャンネル「ドクタートッシュ 緩和ケアの本流」で亡くなる前の1週間のプロセスを解説した動画を投稿したところ、多くの反響が寄せられています。人が死に対する恐怖心を抱くのはその実情を知らないからではないか、死を知ることから生きることを前向きに考えられるようになるのではないかと感じたという著者。最期まで自分らしく生きるために、身近な人の死を受容して生きていくために、不安の正体を因数分解しながら、前向きに人生を歩んでいくための言葉を1冊にまとめました。