時代は太平洋戦争の末期。われわれは日本が負けているとは知りません。ひたすら勝つと信じて、頑張りました。「腹へった、腹へった」とこぼしながらする作業。体をこわして亡くなった同級生も大勢います。

私たちの従事していたのは、「松根掘り」という作業です。戦闘機を飛ばすのにガソリンが足りないので、松の根っこから油を取って使うというのですが、今思うとおかしな話。

松の根からどれだけの油が取れるというのでしょう。そもそも、ガソリン不足の国に戦争などできるのでしょうか。

何も知らない私たちは、勝つと信じて炎天下に汗水たらしながら松根掘りをしていました。ふらふらになり、「もうだめだ、死んだほうがマシだ」と言うと、「死んでいられん。生きていたら、きっといいことがある」「戦争に勝ったら、必ずよくなる」などとみなで励まし合ったものです。

しかし神風は吹かず、日本は敗戦。私たちは荒れ果てた国土で茫然とするしかありませんでした。