子どものころに出合った、奇妙な光景やぞっとした出来事…大人になった今でも「あれはなんだったんだろう?」と記憶に残っている不思議な体験はありますか。今回は、作家・蛙坂須美さんが体験者や関係者への取材をもとに綴った実録怪奇譚『こどもの頃のこわい話 きみのわるい話』から一部を抜粋し、追憶の怪異体験談をお届けします。
首ぞろえ
壮亮さんが小学生の頃、同級生に周平君という子がいた。
勉強も運動も中の下といったところで、目立つタイプではない。
壮亮さんとは特に仲が良かったわけではないが、家が近所で登校班が一緒だったため、言葉を交わす機会はそれなりに多かった。
その周平君の一家が、奇妙な新興宗教に入れ込んでいるとの噂が流れた。
当時の壮亮さんは「シンコーシューキョー」とはどういったものか、いまいちよくわかっていなかった。しかしどちらかといえばよくないものなのだろうということは、その言葉を口にするときの大人たちの表情から察せられたという。
以後、周平君の様子は少しずつおかしくなっていった。
わかりやすい変化は服装である。
夏でも冬でも雨の日も雪の日も、いつも同じ服を着て登校してくるようになったのだ。
それというのが経文らしき文字がびっしりと書き込まれた半袖Tシャツで、見るからに垢じみていたとか異臭を放っていたとかいう記憶はないから、おそらくは何着かをローテーションしていたのだろう。