認知症の進行を遅らせるには?
若宮 それには、どうしたらいいんですか?
和田 もっとも大事なことは、今日できていることは明日もできる、とご本人が心穏やかに過ごすことです。周囲も失敗を責め立ててはいけません。若宮さんのような「世界に評価される老人を目指そう」なんて、いきなり考える必要はないんです。
例えば、いま自動車を運転できている人は、明日もできるはず。こうした小さな積み重ねでいいんです。ほとんど運転してこなかった人が年老いてからいきなり運転してみようというのは危ないのですが、ずっと運転してきた人は、社会の空気に流されて返納する必要なんてありませんから。
若宮 私も長年、コツコツとデジタル機器を使い続け、アプリを開発できたという経緯があります。
※本稿は、『和田秀樹、世界のマーチャンに会いに行く』(小学館)の一部を再編集したものです。
和田医師が日本の高齢者の「ロールモデル」と敬愛する、世界最高齢プログラマーの若宮さんと緊急対談。超高齢社会ニッポンの大問題や新たな高齢者像について語り合います。
出典=『和田秀樹、世界のマーチャンに会いに行く』(著:和田秀樹・若宮正子/小学館)
和田秀樹
精神科医
1960年大阪府生まれ。東京大学医学部卒。東京大学医学部附属病院精神神経科助手、米国カール・メニンガー精神医学学校国際フェローを経て、現在、和田秀樹こころと体のクリニック院長。立命館大学生命科学部特任教授。高齢者専門の精神科医として、30年以上にわたって、高齢者医療の現場に携わっている。主な著書に『年代別 医学的に正しい生き方』(講談社)、『六十代と七十代 心と体の整え方』(バジリコ)、『70歳が老化の分かれ道』(詩想社)、『80歳の壁』(幻冬舎新書)、『心が老いない生き方 - 年齢呪縛をふりほどけ! -』(ワニブックスPLUS新書)など。
若宮正子
世界最高齢プログラマー
1935年東京生まれ。東京教育大学附属高等学校(現・筑波大学附属高等学校)卒業後、三菱銀行(現・三菱UFJ銀行)へ勤務。定年をきっかけにパソコンを独自に習得し、同居する母親の介護をしながらパソコンの楽しさにのめり込む。1999年にシニア世代のサイト「メロウ倶楽部」の創設に参画し、現在も副会長を務めるほか、NPO法人ブロードバンドスクール協会の理事として、シニア世代へのデジタル機器普及活動に尽力している。2017年、雛人形を正しく配置するiPhone用のゲームアプリ「hinadan」を開発し、配信。米国アップル社による世界開発者会議「WWDC 2017」に特別招待。18年には国連総会で基調講演を行うほか、政府の「人生100年時代構想会議」をはじめ「デジタル社会構想会議」などに委員として参加。ICTエバンジェリスト、デジタルクリエイターとして活躍する。