治療の選択に迷ったら……「先生の身内だったら?」と尋ねましょう

病院では「選択」を迫られることがあります。たとえば、「手術をしてがんを切除するか、抗がん剤で治療するか」というような場合です。みなさんは、こんなときどうするでしょう?

インフォームドコンセントはご存じですね。「いま、このような状態です。今後はこんな治療をする予定です」と、医師から説明を受け、患者や家族が同意したうえで治療を進めるという医療上の約束事です。これは義務ですので、医師はそれを果たさなければなりません。

ところが、ここには隠れた問題もあります。患者サイドが、本当に納得できているのか、という点です。いくら説明を受けても、治療の結果は誰にもわかりませんし、話の内容が難しくて、理解できない場合もあるでしょう。でも、同意しないことには進みませんから「わかりました。その治療でお願いします」と、迷いを抱えたまま答えることになるわけです。

「手術をするか、薬で治療するか」という選択も同じですね。どちらの選択が正解かはわかりません。正直、医師にもわからない。だからこそ「同意」を得るのです。

では、どうしたらいいか? 私なら、医師にこう質問します。

「先生の奥さまや大切なご家族なら、どうなさいますか?」と。

私は、先生が、最愛のご家族にする方法を選びたいと思います、と言います。治療には100%大丈夫、という保証はありません。

不測の事態も起こり得るわけですから、医師だって怖いのです。でも、万が一うまくいかなかったとしても、口実をつくることはできるでしょう。体質が問題でしたとか、予想以上に状態が悪かったとか。

だからこそ、患者サイドとしては、せめて医師の覚悟を仰いでおきたい。「先生なら?」という質問は、そのためのものです。万が一のことが起きたとしても、「先生も全力を尽くしてくれたのだから」と納得できると思うのです。

※本稿は、『長生きは小さな習慣のつみ重ね――92歳、現役看護師の治る力』(著:川嶋みどり/幻冬舎)の一部を再編集したものです。


長生きは小さな習慣のつみ重ね――92歳、現役看護師の治る力』(著:川嶋みどり/幻冬舎)

看護の世界で75年、生と死に向き合い〝人間らしく生きる〟ことを問い続けてきた92歳の現役看護師。生命を輝かせ自己治癒力を引き出すには、あたり前の暮らしを見直すこと。ぴんぴんキラリ健康長寿の秘訣決定版。