パリの地下鉄に自分のポスターが

そろそろパリを引き揚げようかという時に、第1の転機となるべき映画出演の話が舞いこむ。『パリの中国人』(1974年)という作品で、中国軍の若い将軍役。主役だった。

――たまたま僕のフランス語の女の先生が、映画界で結構力のある、ジャン=ポール・ベルモンドとか、そういう人のマネージャーさんと友達で。近々撮る映画の話題から、あら、年格好もちょうどいい東洋の青年がいるわ、ということで、僕はジャン・ヤンヌという監督に会いに行かされたんですよ。

そうしたら「探していた役が近くにそのままいた。君で行こう」ということになって、即決でした。

映画は近未来SFみたいな感じ。フランス人は第二次世界大戦中のドイツによる占領時代がトラウマになっていたんですよ。で、それを模して『女だけの都』とかいろんな映画を作るんですが、『パリの中国人』は、近未来のある朝、パリの町が緑色の制服の中国兵たちに占領されている。

その将軍はひょろひょろっとした若者で、というミスマッチが……喜劇ですからね。ナイトクラブやカジノに連れ回されて疲れさせられて兵は撤退させられる、という話です。

この映画の、僕が女の人と踊っているポスターがパリの地下鉄のあちこちの駅に大きく貼り出されて。これ、ポスターとしての出来がよくて、当時話題になりましたね。