苦労続きだった人生の末
彼は、年下男子役で多くのドラマに出てきたが、30歳を過ぎてから人気が急上昇。口元が上品で笑顔がさわやかなのだが、ドラマでは工作員役のため、苦虫を噛み潰したような表情ばかり。
それにもかかわらず、私は毎夜放送時間になるとテレビの前で恋人を待つかのように胸を躍らせた。
悲しすぎる最終回では、自分が推しと決別するかのような寂寥感に慟哭。その夜は眠れなかった。
推しに出会って数ヵ月。日本にもファンクラブがあるが、小心者の私は、入会に踏み切れずにいる。部屋中に貼ったポスターを見つめては、「素敵だなあ」とため息の日々。
「70歳手前から推し活って遅くない?」と娘は笑うが、苦労続きだった人生の末に見つけた素敵な笑顔が、私を幸せにしてくれる。