「かわいそう」と決めつける必要はない

そもそも、今の日本では制度面から見ても一人で暮らせるように整えられています。

地域には、高齢者を支えるためのさまざまな支援があります。たとえば、日帰りで介護サービスを受けられるデイサービスや、介護や医療の相談に応じてくれる地域包括支援センターなどです。

さらに、最近では通信機能や人感センサーがついた家電製品や見守りカメラなど、家族が遠くからでも高齢者の様子を確認できる機器も増えています。

その他にも、郵便局員や民間のスタッフが定期的に訪問してくれるサービスや、異変があればすぐに警備会社のスタッフが駆けつけてくれるセキュリティサービスなど、高齢者の暮らしをサポートする見守りサービスも充実しています。

これらの制度や技術を活用することで、高齢者が地域や社会とつながりながら自分らしい生活を送ることができるのです。一人暮らしであることを「かわいそう」と決めつける必要はありません。

それでもなお親の一人暮らしが心配というなら、「近くに住む」のがおすすめです。

適度な距離感と安心感を両立できるため、お互いに無理のない関係を保ちながら安心して暮らすことができるはずです。

家族に限らず、人間関係における後悔の多くは「自分の気持ちを素直に伝えなかったこと」から生まれるように思います。

正直な思いを言わずに我慢したり、相手に遠慮して本音を隠したりすると、誤解が生まれたり、関係がこじれることがあります。また「いい人」を演じようとして、自分の感情とは裏腹の態度や言葉を選ぶことで、長い間ストレスを溜め込んで不機嫌になってしまう人もいます。だからこそ、自分の気持ちに正直になり、ときには勇気を持って思いを伝えることが適切な人間関係を築き、心の健康を守るためにもっとも大切な一歩だと思うのです。

※本稿は、『医師しか知らない 死の直前の後悔』(小学館)の一部を再編集したものです。

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医師しか知らない 死の直前の後悔』(著:和田秀樹/小学館)

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