外出や旅行に行くこともできる
たとえば、外出や旅行に行くこともできます。
ある日、施設が企画した日帰り旅行に同行し、利用者の方々と近くの温泉地を訪れました。バスに乗り込むと、普段はほとんど言葉を発しない方が窓の外を指差しながら「昔は家族とよく旅行に行ったんだ」と話し始めました。その声には懐かしさだけでなく、生き生きとした力強さがありました。
「介護を受けている人もツアーに行けるのか」と思われるかもしれません。しかし実際には、要介護度があっても外出できる人は多く、行ってみると皆さんが感激されるのです。
たとえば2025年には、大阪・関西万博に高齢者の方々と一緒に行きました。万博のシンボルである大屋根リングを、休憩をはさみながらもしっかりと半周歩かれていた方もたくさんいて、その姿は職員にとっても大きな驚きと感動でした。高齢になっても「まだ歩ける」「まだ外に出られる」という実感を持つことができ、その体験はご本人にとっても大きな誇りになったのです。
「長生きしているのは、今日のためなんだ」という言葉を発された方がいました。私たちは普段「今日のために生きている」と思えるでしょうか。何のために生きているのでしょうか。ここには、今日という1日をまた「生きていてよかった」と噛み締めて過ごす日々があります。
旅館で昼食を囲むときには、普段は見せない柔らかな笑顔が広がり、職員も利用者も一緒に笑い合いました。豪華な観光名所に行ったわけではありません。ただ一緒に外の空気を吸い、食事を味わっただけです。それでも、その時間は「人生を再び旅する時間」になり、介護の仕事は身体を支えることにとどまらず、人生に再び彩りを添えることでもあるのだと深く感じました。