海の生態系が壊されると
同様な事態が今、沖縄諸島や米国の海で起きている。西表島に近い黒島やフロリダ湾で、漁師たちは、サメが漁業の対象となる魚を捕食したり、あるいはヒトを襲ったりするのではないかと恐れて、大型のイタチザメやオオテンジクザメ、ツマジロ、オオセなどを駆除し続けた。
その結果、天敵の大型ザメがいなくなり、海草を食べるアオウミガメが2~4倍ほども増えたことが報告されている。その後、増えたアオウミガメが海草を次々と食害し、藻場が消えてなくなった。
特に、西表島など八重山諸島のみに群生する絶滅危惧種の海草で、一面に雪が積もったかのように開花する希少なウミショウブがアオウミガメによって食害され激減した。今では網で囲み、食害を防がなくてはならないほど危機的な状態になっている。
このように、食物連鎖の最上位にあるサメの乱獲や駆除によって、海の生態系がいったん壊されると、思わぬ形で日々の生活や身の周りに跳ね返ってくる。
※本稿は、『日本の海から魚が消える-温暖化、IUUの問題から陸上養殖の挑戦まで』(中央公論新社)の一部を再編集したものです。
『日本の海から魚が消える-温暖化、IUUの問題から陸上養殖の挑戦まで』(著:矢野勲/中央公論新社)
多様な生物で溢れていた日本の海が直面する危機に対して、どのような解決策があるのか。
環境改善につながるクジラの保護や世界各国の資源回復の取り組み、さらには著者自身が試みる陸上養殖などから様々な可能性を示す。




