弁当箱の中身は、手前から時計回りに海老真薯、カマスのイクラ射込み焼き、奥の小皿は海老芋の菊花餡かけ、柚子釜入りの鱧の子と松茸の和え物、だし巻卵に黒豆、中央が鴨ロース煮。弁当箱の隣は、ヒラメとマグロのお造り、先付けのゆり根と菊菜の白和え。お椀はもち鯨とかぶらの白味噌仕立て。寒い時には白味噌のやわらかな甘みがほっこりと身体を温めてくれそう


しんみり美味しいお値打ちランチ

今年は年末年始の帰省も旅行も諦めて、おうちで静かに過ごした方も多いのでは?

そろそろ出かけたい……という時に足を向けてみたいのがここ、麻布十番の「味はな」だ。目立たぬビルの中にあるこの店の昼膳なら、きっと気分を一新させてくれるに違いない。

ランチとはいえ、その内容は豪華だ。メインの大徳寺弁当には、定番のだし巻卵を始め、海老芋の菊花餡かけや海老真薯揚げ、イクラを射込んだカマスの塩焼きなど手の込んだ品々が目にも艶やかに盛り込まれている。

締めは梅干し風味の白魚のご飯。米は粒立ちがしっかりした山形の雪若丸だ


これだけでも充分ご馳走だが、弁当に加えて先付け、お造り、お椀に締めのご飯が順に登場。ちょっとしたコース仕立てで楽しめる贅沢さも気分を盛りあげてくれる。いずれも、一つ一つ丁寧に作られていることが舌に伝わる自然な味わい。派手ではないが、しんみりとした美味しさが印象的だ。食後にはデザートまでついて4000円はお値打ちだろう。

腕を振るう料理長の西山道泰さんは、ミシュランの星付き和食店などでも陣頭指揮を執った経験を持つ大ベテラン。できるだけ作り置きをせず、できたてを用意する姿勢も好ましい。正統派の日本料理で、今年の食の事始めはいかがだろうか。