でも困ったことに、私たち女は心身ともに健全な男よりも、優しさを素直に出せない、どこかに翳りのある男に魅かれます。ましてそれが役者なら……。たとえば浩市さんが『新選組!』で演じた芹沢鴨。何だか悲しくて大好きでした。
――あ、ありがとうございます。
鴨に関して言えば、69年に三船敏郎さんが撮った『新選組』で、実は三國が芹沢鴨をやっていましてね。僕は子どもだったからリアルタイムでは観ていないけど、あとで観たら、非常に彼が哀れで、それまでに描かれてきたただ暴れん坊なだけの芹沢鴨とはまったく違ってた。
そこで文献を調べてみたら、鴨は家柄もよくて、子どもたちに読み書きを教えたり、絵もよくして、非常に知的な人物なんですね。
そんな時に三谷幸喜さんから、「今度大河ドラマで新選組をテーマに書くから芹沢鴨をやってくれませんか?」と言われて、三國の鴨のことをちょっと話したら、三谷さんもその映画を観ていたんです。
鴨は知的な人物だけど、近藤勇に比べて人間としての大きさがない、ということに対する自覚がある。そのコンプレックスから暴れ者になって、自滅して行く。三谷さんがそれでいいからということでやらせていただいたのが、あれだったんです。
三國の演じた鴨が僕にとって非常に印象深かったので、そこにプラスアルファはしたけど、基本路線は一緒でしたね。
鴨という人間の、コンプレックスみたいなものがどうしても裏目に出てしまう人間。そういう関連づけ方が三國と同じ方向でやれたことが、僕にとって非常によかったですね。