
週末にはリストを片手に、夫と一緒に氷の旅へ…(写真:stock.adobe.com)
時事問題から身のまわりのこと、『婦人公論』本誌記事への感想など、愛読者からのお手紙を紹介する「読者のひろば」。たくさんの記事が掲載される婦人公論のなかでも、人気の高いコーナーの一つです。今回ご紹介するのは静岡県の60代の方からのお便り。お茶どころ静岡県では、毎年夏になると「茶氷」というイベントが開催されるそうで――。
楽しみな「氷活」の季節
肌に触れる空気に、ほんのりと夏の気配が混じりはじめた6月中旬。心がそわそわと動き出します。今年はどんなかき氷に出合えるのだろう。そう、「氷活」の季節の始まりです。
私の暮らす静岡県は、全国有数のお茶どころ。そんな地元の魅力を活かし、毎年「茶氷(ちゃごおり)」というイベントが開催されます。お茶をテーマにした個性豊かなかき氷を、製茶問屋やカフェが趣向を凝らし、県内各地で提供してくれるのです。
「茶氷」の季節が近づくと、参加店舗で専用の小冊子が配られます。私は毎年その冊子をページの端から端まで熟読し、目を引く一杯を見つけては、行きたいお店をリストアップ。濃厚な抹茶の緑、香ばしそうなほうじ茶の茶色、爽やかな煎茶の透明感……どれもこれも、夏が口いっぱいに広がりそうな魅力を秘めています。
週末にはそのリストを片手に、夫と一緒に氷の旅へ。ぐったりするような暑い日でも、目的のお店にたどり着き、かき氷を口に運べば、身体の中に涼しさが満ちる。あまりの冷たさに一瞬顔をしかめても、ふと気がつけば笑顔になっている……そんな瞬間が、たまらなく好きなのです。
9月の終わり、残暑がようやく落ち着いてくるころには、今年もたくさんの氷に出合ったなと、夏の思い出をふり返ります。ひとつひとつの味に、それぞれの風景が重なっていて、頭の中がまるで旅日記のよう。
この「氷活」は、ただのかき氷店めぐりではありません。夏を味わい尽くすための、私なりの小さな冒険であり、季節と心を重ねる大切な時間なのです。