厚生労働省の「簡易生命表(令和6年)」によると、2024年の日本人の平均寿命は男性が81.09歳、女性が87.13歳だったそうです。そんななか、長年高齢者医療に携わる精神科医・和田秀樹先生は「高齢者を専門に診る精神科医をしていると、死ぬ間際や死が近づいたと自覚したとき、しみじみ後悔の声を聞かせてくださる患者さんが多い」と語ります。今回は、和田先生の著書『医師しか知らない 死の直前の後悔』より、後悔しない人生を送るための方法を一部ご紹介します。
家族のために自分の人生を犠牲にしてきた
自分の人生を後回しにしてきた女性の嘆き
「先生、私の人生って、何だったんでしょうね」
あるとき、そっとつぶやいたのは80代の女性でした。
ずっと子どもたちの世話に追われてきて、ようやく手が離れたと思ったら、今度は実親の介護、そして義理の親の介護が始まり、自分のために使える時間はほとんど持てなかったといいます。
ようやく親たちの介護が終わったときには、すでに70代半ば。自分の体はすでにボロボロで、もはや何かをやろうという気力すら湧いてこない。「もっと自分の人生を生きたかった……」と語っておられました。
このように、家族の介護を続けてきた人が、家族を見送ったあとに強い喪失感や虚無感を感じて何もできなくなり、まるで「介護廃人」のようになって老いてしまうというケースは少なくありません。
また、「親の介護や看病を続けてきた結果、自分の趣味など何ひとつできなかった」と語る女性や、「夫の両親との同居で気が休まることがなかった」と語る女性もいました。
家族のために自分の思いを長く我慢してきた結果、晩年に虚しさと後悔を抱えてしまう人も多いのです。