愛着障害かどうかの診断は容易ではない

近年、幼少期の愛着障害が大人になってさまざまな精神疾患を引き起依こすことはわかってきました。

しかし、精神疾患で受診する大人の患者さんが、かつて愛着障害であったと診断するのは容易ではありません。

たとえば「幼少期に不十分な養育の極端な様式を経験」し、さらに「幼少期に愛着障害の診断を満たす状態」であったことが明らかな場合には、愛着障害だったと考えられます。

しかし、本人の語る幼少期のできごとだけで、これら2点について判断するのは困難です。

ただ、患者さんの症状をみて、明らかに複雑性PTSDに該当するとわかれば、トラウマ(心的外傷)に焦点を当てたPTSD症状の薬物療法・認知行動療法などが有効な場合もあります。

自己肯定感に焦点を当て、対話を重ねる必要がある今回扱う「大人の愛着障害(愛着の問題)」では、こうした診断には当てはまらないけれど、愛着形成時の問題で日々生きづらさを感じている人も対象としています。

そのなかには、長期間精神疾患を患っている人や、何度もくり返している人もいます。愛着の問題が隠れていると、精神疾患だけを治療していてもなかなか改善しないためです。

診察の際に生育歴をふり返りながら、自分の問題を自覚し、自己肯定感に焦点を当てて話をしていく必要があります。

 

※本稿は、『大人の愛着障害:「安心感」と「自己肯定感」を育む方法』(大和出版)の一部を再編集したものです。


大人の愛着障害:「安心感」と「自己肯定感」を育む方法』(著:村上伸治/大和出版)

【大人になっても愛着の形成はできる】

自分のことが嫌い、基本的な安心感に乏しい…。

それは子どもの時に育まれる愛着がうまく形成されなかったから。
普通の人は、そこそこの自己肯定感と他者信頼感を持っているものの、強いストレス状況や逆境では潰れてしまいます。
一方、強固な愛着形成ができていれば潰れることはありません。
十分ではなかった愛着を自ら築き、何があってもグラつかない自分になる法。