「我慢」と「動かしすぎ」の両方を避ける

平井:逆に、医療機関に相談した方がよいサインも教えてください。

高平:鼡径部の痛みが続く、歩く距離が明らかに短くなった、夜間も痛む、数週間単位で症状が強くなっている、日常生活に支障が出ている場合は、自己流の運動だけで様子を見続けず、整形外科で相談してください。股関節の痛みにはさまざまな原因がありますし、早めに状態を知ることで、生活上の工夫や治療の選択肢を考えやすくなります。

平井:女性に多いと聞くと不安になりがちですが、「自分の身体の特徴を知る」という捉え方が大切なのですね。

高平:はい。寛骨臼形成不全があっても、症状の出方や経過は一人ひとり違います。「女性だから」「50代だから」と決めつけるのではなく、自分の変化に気づき、無理のない範囲で動き、必要なときは専門家に相談する。それが、股関節と長く付き合う基本です。

平井:股関節のことを少し知るだけでも、日常の中で気づけることが増えそうです。この連載では今後も、歩き方や姿勢、運動、体重との付き合い方、スポーツを楽しむための身体づくりなど、身近な疑問を一つずつ伺っていきたいと思います。

高平:股関節は、特別な運動をするときだけ意識する関節ではありません。立つ、歩く、座る、階段を上る、旅行をする、ゴルフやテニス、ダンスなどのスポーツを楽しむ。そうした毎日の動きすべてに関わっています。まずは自分の身体の変化に気づくこと。そのうえで、無理なく動き続けることが大切です。この連載を通じて、股関節を難しく考えすぎず、ご自身の身体と上手に付き合うための知識を少しずつお伝えしていきます。

※本記事は一般的な健康情報を提供するもので、個別の診断・治療に代わるものではありません。股関節に強い痛みがある方、すでに股関節疾患の診断を受けている方、手術後の方は、運動を始める前に主治医や医療専門職へご相談ください。

【医学的内容の確認・参考資料】

・日本整形外科学会「変形性股関節症」『症状・病気をしらべる』。

・Miyatake K, et al. Japanese Orthopaedic Association (JOA) clinical practice guidelines on the management of osteoarthritis of the hip, 2024 - the third edition - secondary publication. J Orthop Sci. 2026;31(1):1-62. doi:10.1016/j.jos.2025.10.006.

・Sato T, et al. Etiology and clinical trends in hip osteoarthritis in Japan: Insights from a multicenter cross-sectional study. J Orthop Sci. 2026;31(1):187-193. doi:10.1016/j.jos.2025.06.006.

・Ohfuji S, et al. Factors associated with diagnostic stage of hip osteoarthritis due to acetabular dysplasia among Japanese female patients: a cross-sectional study. BMC Musculoskelet Disord. 2016;17:320. doi:10.1186/s12891-016-1179-4.

・de Hundt M, et al. Risk factors for developmental dysplasia of the hip: a meta-analysis. Eur J Obstet Gynecol Reprod Biol. 2012;165(1):8-17. doi:10.1016/j.ejogrb.2012.06.030.

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高平尚伸教授が会長を務める​「日本股関節学会」が横浜で開催
2026年10月23日(金)・24日(土)、パシフィコ横浜で「第53回日本股関節学会学術集会」が開催されます。今回、会長を務めるのは高平尚伸教授です。
10月24日(土)の特別企画「トレーナーに学ぶ鼡径部痛のマネージメント」をはじめ一般の方も参加できる催しも。
詳細はこちら『股関節のミカタ』