季世恵さんよろしくね

その後、本もたくさん購入してくださり、お知り合いに配ってくださったそうです。

講演でも私の話をしてくださっていたらしく、「樹木希林さんの話を聞いて連絡させてもらいました」と見知らぬ数名の方からの連絡で知りました。

「私の『さよならの先』はなんだろうね。最近そんなことを考えている。それからやっぱり也哉子のことを考えている。あの子は一人っ子だからね、だから季世恵さんよろしくね。也哉子は呼吸をするのが下手なんだと思う。呼吸は精神面を整えるためにも大事だからね。それから裕也はさ、私が先に死んだらなるべく早く迎えに来ようと思う」

渋谷のホテルの上階、「今夜は景色をごちそうにして、赤ワインを飲もうよ」とやって来たレストランで、希林さんはご自分がいつか「さよなら」をしたその先の話をしていました。

※本稿は、『エールは消えない-いのちをめぐる5つの物語』(婦人之友社)の一部を再編集したものです。


エールは消えない-いのちをめぐる5つの物語』(著:志村季世恵/婦人之友社)

「人がこの世を去ってからも、応援(エール)の思いはずっと生き残る。決して消えたりしない。まるでお守りみたいに」。

本書は、著者が見送った87歳の母のこと、最期を共に過ごした樹木希林さんのこと、自殺した娘の子どもを育てたお母さん、両親をなくし伯父伯母に引き取られた姉妹と、見守るおばあちゃん、子育て中の盲目のお母さんなど、5つの多様な家族の物語と、めぐるいのちを描いた珠玉のエッセイ集です。
巻末には、内田也哉子さんとの対談「母をおくる」も収録。