この旅をきっかけに私は少しずつ落ち着き取り戻していきました。同じ頃、お母さんを乳がんで亡くされた知人から「長い目で治療をしてくださいね」とメールをもらった時もハッとしました。そうだ、私に残された時間はわからないけれど、がんの治療は日進月歩!きらきらゆらゆら、自由に悔いなく、これまで通りの日常を送ろうと思えるようになりました。

あの時の混乱はなんだったのでしょう。体調の悪さの大半は自分の心が引き起こしたものでした。ありのままを正しく認識することの重要性を痛感します。混乱を軽減するために診察室のすぐ隣にカウセリング室があれば…とも。

昨年、70歳を迎えました。病気があってもなくても、病や死を意識せずに済ませることはできない年齢です。私にとって再発は再出発、いのちと向き合う機会をいただけました。家族や友達からやさしくしてもらえることにも感謝、感謝です。

私の周囲にもがんを宣告された人がポツポツと現れ始めました。アドバイスを求められたら、自分の状態を客観的に知ることの大切さを伝え、長い目で治療を考え、今を楽しもうと励ましています。


第13回 リリー・オンコロジー・オン・キャンバス
がんと生きる、わたしの物語。コンテスト 受賞作品一覧

・絵画部門入選『再生した私