チャン・ツィイー、第32回東京国際映画祭オープニングセレモニーにて(https://ja.wikipedia.org/wiki/章子怡
現代中国にうごめく「謎の組織」とは? 中国について硬軟入り混じったノンフィクション作品を数多く発表しているルポライターの安田峰俊氏が、現在追いかけているテーマが「中国の秘密結社」だ。実は、国際的に知名度が高い大物中国人女優チャン・ツィイーも秘密結社と浅からぬ関係があるという。詳しい事情を寄稿してもらった──

大女優の政治的バックグラウンド

中国に関心がない人でも、映画女優のチャン・ツィイー(章子怡)の名は知っているだろう。チャン・イーモウ監督の名作映画『初恋のきた道』で恋する少女を演じた可憐な姿で世界に衝撃をあたえ、その後も『グリーン・デスティニー』や『2046』、『SAYURI』など名だたる映画への出演を続けた。一昔前の花王のシャンプー「アジエンス」のCMで見せた妖艶な姿を記憶している人も多いかもしれない。

ところで、そんなチャン・ツィイーの政治的なバックグラウンドはご存知だろうか。実は彼女は、2012年12月3日に北京で開かれた中国致公党の第14回党大会に出席している。つまり、チャン・ツィイーはこの政党の党員なのである。

致公党の党大会にチャン・ツィイーが出席したことを伝える人民政治協商会議の公式ホームページ。『人民政協網』より(http://www.rmzxb.com.cn/c/2016-02-14/697474.shtml

いぶかしく思う方も多いことだろう。中国は中国共産党の一党独裁国家ではなかったか? 「中国致公党」なる耳慣れない政党が、なぜ北京で党大会を開催して、世界的女優を党員に加えるような活動ができているのだろうか。