発達障害・ADHDの診断・治療の専門家である加藤俊徳脳内科医。1万人以上の脳を診断してきた先生のもとには「いつも周りの顔色を気にしてしまい、結果、損ばかりしている」という悩みが多く届くそうです。先生によれば「自分のペースを守りたい」と考える人ほど、実は「感覚スペース」と呼ばれる“他人との距離”に振り回されているケースが見られるそうで――。
「他人の機嫌が気になって仕方ない」理由
「自分の気持ちがわからない」「まわりの顔色に左右されてばかり」といった悩みを持つ人は、周りの人の感情に敏感で、影響を受けやすい。
そういう人は、職場などで不機嫌な態度を出す人や心配症で不安をまき散らす人などがいると、相手の感情に巻き込まれて自由に行動できなくなります。
不機嫌な態度をとられると、「自分が悪かったのかな」と萎縮してしまって、自分らしく振る舞えなくなってしまいます。心配性の人と一緒にいると、自分まで不安になってチャレンジする気持ちがなくなっていきます。
他人の機嫌が気になって仕方ない場合、その場所が自分にとって安心できない環境である可能性が大きい。「何かイヤなことが起こるかもしれない」と不安を感じているから、防御のためにリラックスできなくてずっと意識が分散してしまうのです。
本当は、イヤなもの、イヤな人は、物理的にシャットアウトしてしまうのがいいですが、職場などでは席が決まっていたりして、そう簡単には離れられません。
私もそういうところがあるので、どんなに「無視していよう」と思っても、脳をもっていかれてしまいます。
「この人、昨日は大丈夫そうだったのに、今日はまた不機嫌だな」というようにちょっとした変化にも気づきますから、その人が部屋に入ってきた途端に恨みはないけど「あー来ちゃった」と、どっと疲れが出てしまうほどです。