若い世代を中心に絶大な人気のちゃんみなさん(提供:ワーナーミュージック・ジャパン)

 

貧困家庭に生まれ、いじめや不登校を経験しながらも奨学金で高校、大学に進学、上京して書くという仕事についたヒオカさん。現在もアルバイトを続けながら、「無いものにされる痛みに想像力を」をモットーにライターとして活動をしている。ヒオカさんの父は定職に就くことも、人と関係を築くこともできなかったそうで、苦しんでいる姿を見るたび、胸が痛かったという。第11回は「美しさとは何か」の話です。

「ちゃんみな」の「美人」という曲

ラッパー、シンガーである「ちゃんみな」の「美人」がTHE FIRST TAKEで披露され、大きな話題を呼んでいる(THE FIRST TAKEはYouTubeのチャンネルで、豪華なアーティストが《一発撮り》でパフォーマンスを披露しており、チャンネル登録者数は600万人を超えている)。4月22日に公開されると、瞬く間に500万回再生を突破した。

「美人」は2021年に発表された「ルッキズム」をテーマにした楽曲。ちゃんみなが高校生の時、容姿に関するおびただしい数の誹謗中傷を浴びたことがきっかけで生まれたという。過度な食事制限などで体調を崩しながら激やせした際、「綺麗になった」と言われ、「美」に対して疑問を持ったという。普段は自己救済のために曲を書くが、「美人」は初めて他者を救うために書いたそうだ。

THE FIRST TAKEでのパフォーマンスを見て、心臓の中心を一突きで射抜かれたような衝撃を受け、今まで抑圧してきたさまざまな感情が蘇った。
強めで印象的な出だしで一気に引き込まれ、いくつもの声色を操り、時に感情を爆発させるみたこともないパフォーマンスに目が離せなくなる。次々繰り出される独創的で胸を抉られるような歌詞に、息つく暇さえない。そして圧倒的な歌唱力に度肝を抜かれる。衝撃で心と体が震え、呆気にとられた。思わず小さく「やべぇ」という声が漏れる。

今回の連載は別のテーマで書く予定だったが、この感情を今書きたい。
そんな衝動に駆られ、気が付いたら真夜中に「このテーマで書かせてください」と編集部にメールを送っていた。
それくらい、THE FIRST TAKEのパフォーマンスは衝撃的だった。

(写真提供◎写真AC)